子どもの権利条約

大人も知っておきたい、
「子どもの権利条約」とは?

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「子どもの権利条約」は1989年に国連総会にて採択された、世界中すべての子どもが持つ人権(権利)を定めた条約です。196の国と地域が締結する、世界で最も広く受け入れられた人権条約です。

子どもの権利条約においての「子ども」とは18歳未満のすべての人を指します。これは条約の第1条に明記されています(ただし、該当する国の法律で成人年齢が18歳未満に定められている場合は、その年齢に従います)。この記事を読んでいる皆さんの中には18歳以上の方も多いかもしれません。すでに子どもではない大人も含めて、子どもの権利条約についてなぜ知ることが必要なのでしょうか?

知る意義はたくさんありますが、ひとつは、将来的に社会のさまざまな役割を担う若者が、子どもの権利や人権に対する理解を持つことで、より公正で平等な社会の実現に繋がるということがあります。

日本の批准は1994年。世界で158番目と遅い批准でした。「子どもの人権問題は貧困国の問題であり日本とは関係ない」という意見や、「学級崩壊などをさらに助長するのではないか?」という教師たちからの不安の声もあり、当時の日本政府は批准に消極的で、翻訳にもきちんと取り組まなかったといいます。批准後も日本は国連からの勧告をたびたび無視したり反論するなど、国内法の整備はなかなか進みませんでしたが、2023年4月に「こども家庭庁」が発足し、同時に「こども基本法」が施行されました。

子どもは守られるだけでなく、権利行使の主体である

「子どもの権利条約」はすべての子ども(18歳未満の人)の基本的人権を尊重することを目指す国際条約であり、子どもが「おとなによる保護の対象としての子ども」ではなく、「子どもはおとなと対等の社会構成員であり、権利行使の主体」であることを明確にしました。

子どもの権利条約は前文および54箇条で構成されていて、第1部の41箇条に子どもが持つ権利が具体的に示されています。基本的な考え方は次の4つです。それぞれ条文に書かれている権利であると共に、原則であるとされています。

1.差別の禁止
すべての子どもは平等にこの条約にある権利を持っています。国や性別、言語、宗教、意見、障害の有無、家庭環境などによって差別されません。

2.子どもの最善の利益
子どもに関係することが決められ、行われるときは、子どもにとって最もよいことは何かを第一に考えなければいけません。

3.生命、生存及び発達に対する権利
世界中の子どもは生きる権利・育つ権利を持っています。

4.子どもの意見の尊重
子どもは自分に関係のあることについて自由に自分の意見を表す権利を持っています。大人はその意見を子どもの発達に応じて正当に重視します。
これらの原則は日本の「こども基本法」にも取り入れられています。

子どもの権利委員会は日本に対して、性教育に関するいくつかの問題点を指摘しています。以下はその主な問題点です。

・包括的な性教育の不足
学校教育において性教育が限られた範囲でしか提供されておらず、性的な健康やリプロダクティブ・ヘルス(生殖に関する健康)についての知識が十分に教えられていないとされています。避妊方法、性感染症の予防、性的同意や権利に関する教育の不足も指摘されています。

・多様な性のあり方に関する教育の欠如
性的指向や性自認に関する多様な性のあり方についての教育が不十分であることから、LGBTQ+の若者が学校や社会で偏見や差別に直面するリスクが高くなっています。

・性教育の内容と方法の一貫性の欠如
日本における性教育の内容や方法には、地域や学校ごとにばらつきがあることも指摘されています。

・性教育に対する社会的・文化的な抵抗
多くの地域やコミュニティでは、性に関する話題がタブー視され、性教育の導入に対して保護者や教育関係者からの反対や抵抗があることが報告されています。

そのほか、性暴力やハラスメントに対する教育の不足、教員のトレーニング不足も指摘されています。

これらの問題点を改善するためには、性教育の重要性を社会全体で認識し、包括的で一貫性のある教育プログラムを提供することが求められています。委員会は、日本政府に対して、性の学びを強化し、すべての子どもが安全で健康的な生活を送るための知識とスキルを身につけられるような環境を整えることを求めています。

子どもの権利条約が生まれた背景

人権という考え方が生まれたのは18世紀ですが、世界の普遍的な価値として認められるようになったのは、第二次世界大戦後のことです。1948年に採択された「世界人権宣言」は、すべての人が生まれながらに基本的人権を持っていることを初めて公式に認めた宣言です。

1959年、国連総会において「児童の権利に関する宣言」が採択され、社会で弱い立場に立たされている子どもたちの状況も、ようやく世界で注目されるようになっていきました。その後「国際児童年」と定められた1979年に合わせて、子どもの人権を包括的に保障するための枠組み作りが本格化し、1989年の国連総会にて子どもの権利条約が採択されました。

「こども家庭庁」の発足と、「こども基本法」の施行

「こども家庭庁」は大人中心の国や社会を子ども中心へと変えていく司令塔的な役割として、日本で2023年4月に作られた新しい組織です。「こども家庭庁」は総理大臣直属の組織であり、こども政策担当大臣も任命されています。ただ、「家庭庁」というネーミングからも分かるように、主眼は少子化対策の方にあり、施策も子育て支援の方向に向かっており、子どもの権利からのアプローチになっていないことが指摘されています。

また、「こども家庭庁」の発足と同時に「こども基本法」が施行されました。すべての子どもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、子どもの居場所作り、いじめ対策、子育てをする人たちへのサポートなど、こども政策を総合的に推進することを目的としています。こちらは子どもの権利条約を実現していく可能性がありそうです。

「こども家庭庁」も「こども基本法」もスタートしたばかりです。形だけでなく、本当に必要とされている支援や活動が進んでいくか、子どもの意見をどうやって集め、反映していくのか、大人たちもしっかりと注目していくことが大事ではないでしょうか?