HIV/エイズという言葉を聞いたことがあると思います。
HIVとはヒト免疫不全ウイルスのことです。それは、ヒトの体を細菌やウイルス、カビなどの病原体から守るために重要な、Tリンパ球やマクロファージなどに感染します。感染すると、体を守る免疫細胞が減っていき、普段は感染しない病原体にも感染しやすくなり、さまざまな病気を発症。こうしてひきおこされる病気をエイズといいます。つまり、HIVはウイルスの、エイズは病気の名前です。
主な感染経路は、性的感染、血液感染、母子感染の3つ。 HIVに感染した時には、血液、精液、腟分泌液、母乳などにHIVが多く分泌されます。
一番多いのが性行為による性的感染です。 精液や腟分泌液に含まれるHIVが、男性はセックスによって生じる亀頭部分の小さな傷、女性は腟の粘膜から侵入することで感染します。また、アナルセックス(肛門性交)をする場合、腸管粘膜から精液中のHIVが侵入。腸管粘膜は傷つきやすいため、腟性交よりも感染するリスクが高くなります。
血液感染は、輸血や注射器、注射針から感染者の血液が血管中に侵入することで感染が成立します。医療現場の針刺し事故や、麻薬や覚醒剤を注射器や注射針を共用して打つことで感染するケースが多いです。
母子感染は、出産時や母乳で育てることによる感染、胎内での感染があります。
予防するためには、HIVが多く分泌される体液が、粘膜や傷ついた皮膚に触れないようにすることが大切です。性的感染を防ぐには、必ずコンドームを使用すること。オーラルセックスの場合も必ず使いましょう。
もし、自分が感染しているか心配な場合は、全国のほとんどの保健所で、無料&匿名で検査が受けられます。また、有料ですが、医療機関でも検査が受けられます。
もし、HIVに感染しているとわかったら、きっと、不安になると思います。発見が遅れるとエイズが発症して重篤化しますが、早期発見、早期治療であれば、治療を受け、薬を飲み、ウイルスの増殖を抑えることで、エイズの発症を防ぐことができます。健常時と変わらない日常生活を送り、HIVを持っていない人と変わらない寿命を期待することも可能です。HIVを完全に排除できる治療法はありませんが、きちんとした治療と薬を飲み続けることが大切です。 エイズが発症してからの治療もある程度は効果がありますが、発症前に比べると明らかに劣ります。早期発見が大事なので、日頃から予防を意識すること、検査を受けることを心がけてください。
また、HIVに感染するリスクのある行為に備えて、前もって予防薬を内服する、PrEP(暴露前予防内服、Pre-exposureprophylaxis)と、性行為の後72時間以内に、HIVに対する治療薬を内服して感染するリスクを低下させるPEP(postexposureprophylaxis)という予防策があります。どちらも内服を1ヶ月程度続ける必要があり、値段は1日1錠の場合、PrEPは11万円程度、PEPは28万円程度が目安になります。どちらも日本では未認可ですが、すでに使用されています。入手するには医師の判断が必要となります。国立国際医療研究センターにあるACC外来で相談することができます。
また、効果的な抗HIV治療を受け、血液中のHIV量が検査限界値未満(Undetectable)のレベルに継続的に抑えられているHIV陽性者からは、性行為によって他の人にHIVが感染しない(Untransmittable)ということがわかっています。 このメッセージをU=U(Undetectable=Untransmittable)といいます。