子宮の入り口付近(=子宮頸部)から発生するがんのことを、子宮頸がんといいます。日本では、 年間約1万人が罹患 しており、近年、患者数や死亡者数が増加しています。若い女性が罹患しやすい ことも特徴のひとつです。
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス=HPVに感染することが原因で起こります。男女ともに感染するありふれたウイルスで、性的接触により感染し、性交経験のある女性の過半数は一生に一度は感染する機会があるといわれています。 感染しても9割の人は免疫の力でウイルスが排除されますが、1割の人は感染が長期持続します。自然治癒しない一部の人は、異形成とよばれる前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頸がんへと進行します。
その予防のために使われるのがHPVワクチンです。世界の100カ国以上において国のプログラムとして接種が行われており、最大で子宮頸がんの90%ほどを予防できると考えられています。 今、日本で承認されているワクチンは3種あります。子宮頸がんの主な原因となるHPV-16型と18型に対する2価ワクチン、同じく16型、18型に加え良性の尖形コンジローマの原因となる6型、11型の4つの型に対する4価ワクチン、さらに5つの型(6・11・16・18・31・33・45・52・58型)のHPVの感染を予防し、90%以上の子宮頸がんを予防するといわれる9価ワクチンです。これらはHPVに感染する前、つまり、初めての性交前に接種することが最も効果的です。日本では、小学6年生〜高校1年相当の女の子を対象に無料の定期接種が行われています (2価、4価、9価)。男子は適用外でしたが、4価に関しては男子も適用になりました(ただし無料の定期接種は行われていない)。一方、海外では男子にも定期接種が行われている国もあります。男性、女性かかわらず感染するウイルスゆえ、日本のこの状況を問題視する専門家は多くいます。
ただ、他のワクチンと同様に、HPVワクチンを接種した後には、接種部位の痛みや腫れ、赤みなどの症状があらわれる可能性があることを覚えておきましょう。また、まれに、呼吸困難やじんましんといったアレルギー症状や、手足の力が入りにくい、頭痛、嘔吐などの神経系の症状などがあらわれることもあります。ワクチンを接種しない選択をすることも自由です。ワクチン接種によるメリットと、リスクに関する情報をそれぞれ収集し、接種をするかどうか、自分が納得したうえで判断することです。
また、定期的に検診を受けることも、子宮頸がんの早期発見には重要です。検診では、前がん病変(異形成)や、子宮頸がんがないかを調べます。ワクチンを受けていてもいなくても、20歳を超えたら2年に一度は検診を受けるようにしましょう。 子宮頸がんは、早期がんのうちに治療すれば治癒率も高く、また、子宮を温存する可能性も十分にあります。また、少しでも気になる症状がある場合や、ワクチンや検診について尋ねたいことがある場合は、早めに婦人科医に相談をしてみてください。