経口中絶薬

日本でもようやく承認された
「経口中絶薬」、
気になる使い方や費用について解説

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2023年4月28日、国内初の飲む中絶薬が承認されました。日本ではこれまで、人工妊娠中絶に際し、掻爬(そうは)法と吸引法という外科的な二つの方法しか選択肢はありませんでした。「掻爬(そうは)法は時代遅れであり、安全な方法に置き換えるべき」だとWHOがガイドラインで発表しており、薬を服用して人工妊娠中絶を行う経口中絶薬を最も安全な中絶方法として推奨しています。

海外では体への負担が最も少ない安全な中絶法として長年使われていることから、日本でも長年承認が待たれていました。一方、健康保険適用外であることへの反発の声も上がっています。ここでは経口中絶薬の使い方や安全性、課題について取り上げます。


経口中絶薬とは?

経口中絶薬とは、口から飲んで人工妊娠中絶を行う薬であり、今回日本で承認されたのはイギリスの製薬会社が開発した「メフィーゴパック」という薬です。これは2種類の薬剤からなり、まず妊娠の継続に必要なホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」を飲みます。次に36時間から48時間後に2種類目の「ミソプロストール」を服用します。これは子宮の収縮を促して体の外に排出させる作用があります。

日本ではこの経口中絶薬の処方は妊娠9週目0日までが対象になり、それ以降は外科的な方法を検討することになります。今回日本で初めて承認された薬であることから、出血や体の負担が少ない期間が設定されました。

厚生労働省の発表によると、ミソプロストール投与後24時間までに人工妊娠中絶が成功した被験者の割合は93.3%であったといいます。また副作用の割合は57.5%あり、主な副作用として下腹部痛や嘔吐が挙げられます。薬を飲んでから2時間以内に嘔吐してしまった場合は、薬が十分に吸収されていない可能性が高く、もう一度受診し、再度内服する必要があります。

ようやく承認された経口中絶薬ですが、普及にはまだまだ課題があります。一つは処方できる施設が限られていること。2023年6月20日現在、経口中絶薬を処方しているのは全国で15施設と限られているのが現状です。経口中絶薬を処方するには現時点では「母体保護法指定医」であることと、「入院可能な医療機関・診療所」であること、この二つが条件としてあります。加えて、手術の時と同様、母体保護法によって配偶者同意も求められます。これは世界のどの国でも要求されていない厳しい制限だと言えます。

二つ目は高額であることです。人工妊娠中絶は健康保険が適用されない自由診療のため、費用は医療機関や地域によって異なりますが、薬の価格がおよそ5万円、加えて診察料と入院費などがかかります。そのため経口中絶薬による人工妊娠中絶には10万円ほどかかってしまうというのが現状です。

海外ではどう使われている?

経口中絶薬は海外では30年以上前から普及し始め、先進国では主流の人工妊娠中絶方法となっています。特に北欧のフィンランドやスウェーデンでは経口中絶薬による中絶が非常に高い割合となっています。

イギリスやフランス、アメリカでは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、中絶薬がオンライン診療で処方できるようになり、最寄りの薬局で受け取ったり、自宅に送られたりしています。また他の中絶方法と同様、国民健康保険などで一部または全額カバーされる国も特に先進国では少なくありません。
経口中絶薬による中絶の費用は国によってまちまちですが、イギリスやフランス、スウェーデンでは国の保険によって個人の負担はなく、ドイツでは低所得者に補助があるといいます。 2005年にWHOは経口中絶薬を妥当な価格で広く使用されるべき薬として「必須医薬品」に指定しています。
女性に対するカウンセリングも重視されています。中絶が本人の意志であるか、誰かに服用を止められたりしないか、DVを受けていないかなど、安全に服用できる環境があるかということにも細心の注意が払われています。

想定外の妊娠は、いつでも誰にでも起こりうる

妊娠するからだを持つ限り、想定外の妊娠はいつでも、誰にでも、起こりうることです。妊娠を継続して出産し、自分で育てるのか、誰かに託すのか、また、中絶するのか、自分で決める権利があります。また、自分が望めば安全な中絶に、誰かに責められたりすることなく、確実にアクセスできることも権利です。
ひとりで選択することが難しいときや、望むケアにアクセスできないときは、「にんしんSOS」はじめ、相談できる大人がいること、あなたはひとりじゃないことを覚えていてもらえたら嬉しいです。
最後に、妊娠はひとりではできません。男性が無関係でないことは言うまでもなく、男性にも責任があることも重要です。


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