分娩とは、陣痛(規則的な子宮収縮)が始まってから胎児と付属物(と呼ばれる胎盤、臍帯、卵膜、羊水)が出るまでのことです。分娩の中でも、赤ちゃんが産道を通り腟から生まれてくる分娩のことを経腟分娩と言います。
帝王切開とは何かしらの理由で経腟分娩を回避した方が安全と予測された場合に、子宮を切開して赤ちゃんを取り上げる手術による分娩方法です。腰から下のみ麻酔を使用することが一般的なので、意識はあり赤ちゃんの産声も聞けます。あらかじめ予定して帝王切開となる場合と、経腟分娩経過中に緊急で切り替わる場合があります。状況によってはあわただしく経過する場合もありますが、医師や助産師がご家族含めて説明し、同意の上で行われます。なお、前回の出産が帝王切開でも次回は経腟分娩が可能な場合もあります。
帝王切開の可能性は誰にでもあることなので、不安なことや心配なことは遠慮せず確認することが大切です。また術後の傷の大きさや痛みなどは人それぞれですが、身体面、精神面共に回復するまでの周囲のサポート体制が必要不可欠です。
お産はこうやって経過する
陣痛の間隔が10分~15分、もしくは1時間に6回以上になったら分娩のスタート。陣痛により子宮口が開き、胎児が押し出されて生まれます。生まれる間際には便意に似た感じを覚え自然に力が入るようになります。これを怒責と言います。陣痛と怒責によって赤ちゃんが生まれ、その後付属物(胎盤、臍帯、卵膜、羊水)が出てきます。
陣痛は「寄せては返す波のように」と表現される、周期的に発作と間欠(収縮のお休み)を繰り返す子宮の収縮です。痛みを感じる人はいますが、その感じ方は人それぞれです。弱い収縮から始まって徐々に強まるので、経過を理解し落ちついていれば少しづつ慣れてきます。最後の最後まで必ず間欠があるのも励みです。
お産の進みが順調に行かない場合は、帝王切開を行うか、妊婦さんの了解を得た上で子宮の収縮を促す陣痛促進剤を使用することがあります。
会陰切開は必ずしなきゃいけないの?
日本では医療機関によってまだ行われているケアでもある会陰切開ですが、全員がするわけではありません。また世界保健機関(WHO)は「慣習的に会陰切開を行うこと」を推奨していません。
日本でも出産の状況により選択的に行うことはあっても、すべてに無条件で行うことは推奨していません。通常は会陰部が切れないように保護しながら、十分に伸びるのを待ってから赤ちゃんの娩出を待ちます。会陰切開が必要な場合は説明し、妊産婦さんの意思を確認することが不可欠です。ただ、会陰切開をしないと希望しても、赤ちゃんや母体の救命のために行わざるを得ないことがあります。
妊娠期間の最終月に会陰マッサージをすることは、会陰の損傷やその後の疼痛の軽減に役に立ちます。
WHOは「ポジティブな出産体験のための分娩期ケア」の重要性を説いています。それは出産する女性の期待を満たす、あるいは超えるような体験であり、安全な環境で、付き添い者と、思いやりがあって技術的に優れた臨床スタッフから、実質的で情緒的な支援を受けながら健康な赤ちゃんを生むこと。「ほとんどの女性は生理的な出産を望んでおり、意思決定に参加して個人的な達成感やコントロール感を得たいと思っている」という前提に基づいています。