陣痛による痛みを避けたいという人は、無痛分娩、すなわち麻酔を使って陣痛の痛みを和らげながら出産する分娩を選ぶことができます。代表的な方法は2つあり、一つは硬膜外鎮痛といって、脊髄の近い場所に局所麻酔薬と医療用麻薬を加えたものを投与する方法です。もう一つは点滴を使って医療用麻薬を投与する方法です。硬膜外鎮痛のほうが多くの国で無痛分娩の第一選択とされています。
無痛分娩はどこの病院でも選択できるわけではなく、無痛分娩を担当する麻酔科医がいる病院などに限られています(2017年時点で全体の約30%)。厚生労働省は無痛分娩を行っている施設の情報を紹介しています。
日本ではまだ少ない出産法
日本で無痛分娩を選ぶ人は、欧米諸国に比べて少ないのが特徴です。日本産科麻酔学会のホームページにあるデータによると(「無痛分娩Q&A」)、日本の硬膜外無痛分娩※率は6.1%(2016年)。その一方、アメリカ73.1%、フランス82.2%、イギリス60%、フィンランド89%となっています。(日本産科麻酔学会JSOAPサイトより)
※硬膜外鎮痛法による、最も一般的な無痛分娩
その理由としては、無痛分娩を担当する麻酔科医を常時配置するのが困難であることや無痛分娩ができる施設が少ないこと、自然分娩より費用が高いことが考えられます。また、“痛みに耐えて産んでこそ赤ちゃんへの愛情が生まれる”、“無痛分娩は甘えである”などの考え方をする人がまだまだいることも、影響を及ぼしています。出産時の痛みと愛情の関係に、医学的な根拠などまったくありませんし、体制の整った施設での無痛分娩は安全です。日本でも少しずつですが無痛分娩を選ぶ人の割合は増加しています。
痛みを全く感じないの?
“無痛”という名前から、痛みが全くなくなるようなイメージがあるかもしれませんが、無痛分娩によって取れる痛みは80〜90%ほどと言われています。痛みをすべてとってしまうと、感覚がなくなっていきむことができなくなってしまうからです。
デメリットもある
最も注意しなければならないのが麻酔の副作用です。足の感覚が鈍くなったり、血圧が下がる、尿意が弱くなる、熱が出る、出産後に硬膜外麻酔の影響で頭痛が起こる、などがあります。その他にも分娩所要時間が長くなったり器械分娩率(産道などでなかなか出てこない赤ちゃんを引っ張り出すこと)が少し上昇するなど、様々なデメリットについても知っておく必要があります。