産後を快適に過ごすために、母親の心身の回復と育児サポートを行う「産後ケア」が広がっています。出産によって変化した子宮や消耗した体力を回復するために、出産後約6〜8週間はなるべく横になって十分な休息を取る必要があります。一人の母親に対して、親戚や両親、近所の人たちが協力し合って出産や育児をサポートしていた昔に比べ、現代では出産後、容易に援助を頼めない人もいて、孤独な子育てをせざるを得ない状況から母親と父親やパートナーへの子育ての負担が増えてしまい、 産後の心身の回復が遅れるケースも。そんなときに大きな助けとなるのが「産後ケア」です。
産後ケアは大きく分けて3パターンある
産後ケアとは、出産後の母親やその家族に 心身のケアや育児サポートを行うサービス。市区町村が地域の医療機関などと連携して実施している「産後ケア事業」と、民間運営会社による産後ケアサービスがあります。どちらも出産退院後すぐに利用できます。産後ケアは大きく分けて宿泊型、日帰り型、訪問型の3パターンが挙げられます。
宿泊型
産後ケア専用施設に宿泊し、母子やその家族のヘルスケア、授乳支援、そのほか子育て全般のアドバイスなどを受けます。レスパイト目的(レスパイト=小休止という意味。出産後の母親が一時的に育児から解放され、心身を休めてリフレッシュすること)で利用する方も多いようです。長期滞在できる施設も。
日帰り型
施設に6〜8時間滞在し、個別または集団でケアを受けます。
訪問型
自宅に助産師 ・保健師が訪問し、施設型と同じケアを受けます。
産後ケアを受けるメリットのひとつに休息があります。慣れない育児で緊張と疲労がたまったとき、宿泊型(施設によっては日帰り型も)では赤ちゃんを預けて一人で眠ることができます。
産後ケア事業は
自治体の努力義務に
2019年に「母子保健法の一部を改正する法律」(改正母子保健法)が公布され、産後ケア事業に取り組むことが自治体の努力義務となりました。ただ自己負担額や利用対象期間などが自治体によってばらつきがあったり、産科医療機関や助産院が少ない地域では委託先が1箇所に集中するなど、まだまだ課題も多いようです。実施していない市区町村もあります。今後は利用者の声が反映されて、どんどん新しい取り組みが始まることが予想されます。「こんな事業があったらいいな」を声にして届けることが、これから産後を迎える方々の助けになるかもしれません。
2023年度から11年ぶりに内容が見直される母子健康手帳には、産後ケア事業を利用した際に記録する欄が新たに設けられるといいます。これを機会に、産後の人、産後を支える人、産後を支える人を支える人、すべての人にとって使いやすい産後ケアの充実を期待したいところです。