日本では出産女性の10〜20%に発症するとも言われている産後うつ。一般的に出産後数週間から起こりやすくなり、食欲がなくなる、気分が落ち込む、眠れない、何でも悲観的に捉えるなど、いわゆるうつ病の症状と共通していますが、うつ病の症状に加えて、児への関心や養育意欲が減退するのが産後うつの深刻なところです。
里帰り出産から自宅へ帰ったあと発症するケースもあるなど、 産後うつは出産後しばらく経ってから発症する ため、慣れない赤ちゃんとの慌ただしい生活の中で、母親自身が自分の不調に気づかないまま症状を悪化させてしまうこともあります。
マタニティブルーズとの違い
産後うつと混同されがちなのがマタニティブルーズです。マタニティブルーズは出産直後から数日間のうちになることが多く、1〜2週間で消える一過性のものを指します。情緒不安定になる、涙もろくなったりイライラが募るなど、産後うつと似たような症状が現れますが、病気ではありません。 マタニティブルーズは30〜50%の母親が経験する と言われ、出産直後のホルモンバランスの変化によって起きる一時的な気分の変動であるため、通常は治療の必要はありません。
産後に気分がすぐれないときは
風邪を引いたら病院へ行ったり薬を飲んだりするように、産後になんだか気分がすぐれないと感じたら無理をせず、まずはかかりつけの医師や地域の保健師・助産師を頼りましょう。ほとんどの地域で産後ケア訪問を実施しています。産院等でも産後健診の助成が始まり、産後うつ質問調査票でうつ傾向のある方を把握するようにしています。また自治体によっては伴走型支援と子育て給付金を組み合わせて支援の幅を広げています。産後うつを防ぐためには産後訪問や1週間、2週間健診を受けること、そこで支援者と繋がっておくことが大切です。
産後うつの治療法はカウンセリング、抗うつ薬や漢方を使った薬物療法などがあります。
どんな人も産後うつになる可能性がある
誰でも産後うつになる可能性はあるため、どんな人も妊娠中から産後に使える支援やサービスを調べて備えておく必要があります。パートナーがいる場合は家事分担などを細かく決めておくといいでしょう。出産前は気にならなかった、洗濯物の干し方やたたみ方、しまい方といった“家事の細部”で揉めることが多いといいます。妊娠中に産後うつの予兆がある人もいるため、妊娠中からの周囲の支援も大切です。