体型や見た目について、“こうでなければいけない”という正解はありません。今、世界はもちろん日本でも、体型や見た目の美にスタンダードはなく、“ありのままの自分の見た目を愛そう”とする「ボディポジティブ」というムーブメントが起こっています。 それなのに、ネットサーフィンをしているとたくさんのダイエット広告を目にするし、カメラアプリには、体や脚を細くしたり、目を大きく加工するような、外見を加工する機能が搭載されていることがあります。何を美しいと思うかは人によって違うものだし、大事なのは自分らしくあること。それなのに、“痩せているほうが美しい”という、ステレオタイプな価値観を私たちに植え付けようとするシーンが日常にたくさん存在しています。
自分が“こうなりたい”と思うボディ・イメージに近づこうと努力することは自由ですが、無理をするあまり体調を壊すなど、体に悪影響が出る場合もあります。特に、気をつけたいのが過度なダイエットです。女性の場合、糖質制限やカロリー制限により体重が減ることで日常生活に必要なエネルギー量が不足し、月経が止まってしまうことがあります。 これを体重減少性無月経といいます。脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンが脳に働きかけ、卵巣から女性ホルモンを分泌させて月経を起こすため、脂肪が減ることで月経が止まってしまうのです。男性の場合も、男性ホルモンが減少します。
すると、さまざまな体の不具合が起きてしまいます。特に、骨の形成には女性ホルモンのエストロゲンが欠かせないため、無月経でエストロゲンの分泌が減ると、新しい骨が形成されにくくなって 骨粗鬆症のリスクが高まります。 男性も、男性ホルモンの減少により骨の成長に影響を受けます。
また、摂食障害を引き起こすこともあります。摂食障害には、食事をほとんどとらなくなる拒食症と、極端に多く食べてしまう過食症があります。拒食症は食事量が減ったり、低カロリーのものだけを食べることで体重が極端に減り、生理が来なくなるなどの深刻な問題を引き起こします。一方の過食症は、食べることをやめられなかったり、無茶な量を食べて吐いたり、食べ過ぎを後悔して憂鬱になったりします。中には、拒食症から過食症になるケースもあります。「痩せたい」という気持ちが強いため、治療をしたがらない人も多いのですが、低栄養はさまざまな不調につながり、最悪の場合は死に至る可能性があることを知っておきましょう。
ダイエットをしていて、3ヶ月以上月経がない無月経状態に心当たりがある場合は、放置せず、婦人科を受診してください。 また、バランスの良い食事を心がけ、体重を元に戻すことが第一です。