ピルを使ったことはありますか? 気になってはいるけれど種類が色々あってよく分からない、副作用が心配、太りそう、などの理由で使うことをためらっている人もいるかもしれません。ただ、ピルは正しく使えば避妊率が99パーセント程度と高く、PMS(月経前症候群)の軽減など、避妊以外の効果が期待できることも。
避妊の選択肢のひとつとして、まずはピルの正しい知識を身につけましょう。
そもそもピルとは?
ピルは合成プロゲステロンと合成エストロゲンという2種類のホルモンをごく少量、一定の割合で配合した薬剤で、経口避妊薬とも呼ばれます。女性が毎日、ほぼ決まった時間に服用することで高い避妊効果を得られます。
日本ではコンドームが主流の避妊法ですが、世界では低用量ピルが主流。1950年代に開発され1960年に販売がスタートした、歴史のある薬です。ピルの登場により女性自らが妊娠するかしないか、産むか産まないか、産みたいならいつ産むかを選択し、キャリアや家計の状況に合わせて家族計画を立てられるようになりました。
手に入れるためには医師による処方が必要で、1ヶ月分で2500円程度かかります。避妊目的の場合、ピルの処方は保険適用外となりますが、月経困難症の治療目的の場合は保険が適応され、ジェネリックを選択すれば1ヶ月分で1000円程度の負担額になります。
避妊用として最もポピュラーなのは低用量ピル
避妊用として現在日本で最もポピュラーなのが低用量ピル。低用量ピルには、効果が期待できる最低限のホルモン量しか含まれていないため、副作用を最小限に抑えることができます。「月経初日から21日間続けて服用し、7日間休む」という28日間が1サイクルとなっています。その他に120日間内服して4日間休む、77日間内服して7日間休むタイプもあります。休みの7日間(4日間)にホルモンの入っていない偽薬を飲んで、飲み忘れを予防する場合も。
また、低用量ピルの中にも種類があり、含まれている合成エストロゲンと合成プロゲステロンの種類や量に違いがあります。これらの違いによって副効用・副作用も異なりますが、どのピルが体質に合っているかを事前に知ることはできません。色々なブランドのものを試しながら自分に合うものを探していく必要があります。
低用量ピルの避妊のしくみ
低用量ピルは内服することで以下の3つの効果を起こし、妊娠を防ぎます。
①女性のホルモンバランスを妊娠に近い状態にする
妊娠中は排卵を促す卵胞刺激ホルモンが出ずに、排卵が抑制されます。排卵が起きなければ妊娠しません。ピルはこの仕組みを利用し、体内のホルモン量を調節して、排卵を抑制することで避妊をします。
②子宮頸管粘液の粘度を増した状態にする
腟と子宮をつなぐ部分(子宮頸管)の中を満たしている粘液の変化により、子宮内に精子が入りにくくします。
③子宮内膜が厚くならないようにする
月経前はエストロゲンとプロゲステロンが順に分泌されるので子宮内膜が厚くなり、受精卵が育ちやすい環境になります。しかしピルは合成エストロゲンと合成プロゲステロンを同時に摂取するため、身体は妊娠に近いホルモン状態でありながら、子宮内膜は厚くなりません。薄い子宮内膜には着床することが難しいため、ピルを飲んでいる間は妊娠しにくい状態になります。
主なメリット
飲み忘れなければ避妊効果は非常に高く、また女性が自分だけの意志で避妊をすることができます。避妊以外でも、月経不順や重い月経、PMSなどを和らげる、肌荒れを改善するなどの効果も期待できます。また、飲むのを中止すれば数ヶ月で身体が元のリズムに戻るため、将来は妊娠を希望している人でも安心して使うことができます。
以下、低用量ピルを飲むことで得られる主なメリットをまとめます。
- 高い避妊効果
- 女性主導で避妊ができる
- 月経不順やPMSの改善
- ニキビなどの肌荒れの改善
など
主なデメリット
低用量ピルは服用に適さない人もいます。例えば35歳以上の喫煙者や特別な持病がある人は服用できません。また、飲み始め初期には頭痛や吐き気などのマイナートラブルが出ることがあります。ただ3ヶ月以内におさまったり、薬の種類を変えることで改善することが多いです。
懸念される主な副作用としては血栓症が挙げられます。血栓症とは、血液が固まりやすくなったり、血流が滞ったりして血液の塊ができてしまう病気です。初期症状として頭痛や腹痛、胸の苦しさ、足の痛みなどが挙げられます。
低用量ピルを使用した場合、血栓症のリスクは2〜4倍上昇します。ただし血栓症のリスクに関しては、妊娠中の女性の方が、ピルを使用中の女性よりもずっと高くなります。
以下、低用量ピルを飲むことで考えられるデメリットをいくつかまとめました。
- 飲み始め初期に頭痛や吐き気などの副作用が出る可能性がある
- 血栓症のリスクが2〜4倍上昇する
- 医師の処方が必要であり、手に入れるために手間と費用がかかる
- 避妊効果は高いけれど、性感染症を防ぐことはできない
など
ATTENTION!
低用量ピルを飲めない人
- 35歳以上で1日15本以上の喫煙者
- 血圧が高い人
- 心臓病のある人
- 血管病変のある糖尿病を患っている人
- 前ぶれのあるタイプの偏頭痛持ちの人
- 肥満の人
など
日本ではコンドームが最も多く使われている避妊法ですが、低用量ピルは、女性が妊娠するかしないか、妊娠したら産むか産まないか、産みたいならいつ産むかを自ら管理できる、つまり自己決定するという点で画期的な避妊方法と言えます。
また、将来的にピルなどの女性主体の避妊法が普及したとしても、男性が避妊について考えなくてよい、ということではありません。男性にも、望まないタイミングで父親にならないように行動を選択する責務があります。
男女共に避妊に対する高い意識を持つために、そして性感染症予防の上でも、ピルとコンドームの併用が理想的です。