性的行動・反応に関する迷信、リスクについて

セックスについて知ってるつもりになってない?
──安心のための基礎知識

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セックスについての情報は、友人との会話やSNS、ポルノなど、さまざまなところから自然と入ってきます。しかしその中には実は誤解も少なくありません。なんとなく知っているつもりでも実はそれが間違っていて、望まない妊娠や性感染症、性暴力につながってしまうこともあります。一方で、セックスの正確な知識は、パートナーとより安心で心地よい関係性を築くための土台になります。今回はよくある“迷信”を手がかりに、性について、身体や関係性など、様々な視点で整理してみましょう。

よく耳にするけど根拠なし! セックスにまつわる迷信のあれこれ

セックスに関する身体の反応や妊娠については、まことしやかに信じられているイメージと事実のあいだにギャップがあります。

例えば、こんな話を聞いたことがあるかもしれませんが、全て間違いです。

・外出し(腟外射精)なら妊娠しない

→妊娠の可能性はある
射精前に出る分泌液(カウパー腺液、俗に言う「先走り液」)に精子が混ざることがあり、完全に避妊できる方法ではありません。そもそもそのタイミングも難しく、不確実です。腟外射精は避妊方法ではないと認識しましょう。

・初めてのセックスでは妊娠しない

→初めてでも妊娠する可能性はある
妊娠は「回数」ではなく、排卵のタイミングと精子が体内に入るかどうかで決まります。初めてかどうかは関係ありません。

・ポルノに出てくる内容は一般的

→ポルノはあくまで演出されたフィクション
ポルノ・AVは、実際のセックスとは異なり、あくまで演出を含んだ製作物です。身体の反応やセックスの流れ、コミュニケーションの描き方も、現実に行うと相手を傷つける可能性があることも多いです。「普通」の基準、「セックスの基準」にはなりません。どういったセックスがお互いにいいのか、パートナーと話し合いながら共につくっていくことが安心につながります。

・セックスのあとにシャワーで洗えば妊娠しない

→妊娠は防げない
精子は射精後すぐに子宮の方へ移動し始めるため、セックス後に腟や外性器外側を洗っても妊娠の可能性は変わりません。セックス後、衛生のためにシャワーを浴びることは推奨されますが、腟内を石鹸で洗うと炎症を起こすこともあるので注意が必要です。

・性欲の強さは男女で違う

→性欲には大きな個人差がある
性欲の強さや性的な行為を望むタイミングに、性別は関係ありません。また、性別だけで単純に決まるものではありません。同じ人であっても、その日の体調や環境、心理状態などにも影響されて、日々変わります。

・濡れる/勃起する=感じている・同意している

→身体反応と意思は別のもの
濡れる・勃起するといった反応は生理的に起こるものであり、必ずしも「快感」や「同意」と一致するわけではありません。同意の確認には、言葉でのコミュニケーションが欠かせません。

・女性は初めてのセックスでは処女膜が破れて必ず出血する

→出血しないことも多い
いわゆる「処女膜」と呼ばれますが、腟は膜で閉じられているものではなく、もともと穴の開いた、大きさや収縮のしやすさなどで個人差の大きい組織です。出血の有無は人によって異なり、「初体験=腟から出血する」というわけではありません。

・女性は必ずオーガズムに達する

→オーガズムには個人差があり、必ず起こるものではない
性別問わず、感じ方やペースは人それぞれ。オーガズムに達するかどうかは、そのときの体調や関係性、安心感にも影響されます。また、「どちらかに問題がある」と責めたり、無理に刺激を与え続けたりして得られるものではありません。単純に決められるものではなく、コミュニケーションや相性の問題として捉えることが大切です。

・見た目が健康そうなら感染症はない

→多くの性感染症(とくにHIV感染症や梅毒)は無症状の期間があります。見た目では判断できません。

・同じ相手(恋人)なら安全

→どちらかが過去に感染していた場合や、関係外での接触があればリスクは残ります。検査の共有が重要です。

・挿入しなければ(フェラだけなら)安全

→オーラルでも淋病やクラミジア感染症、ヘルペス、梅毒などは感染します。

・コンドームは気持ちよくないから使わなくてもいい

→コンドーム不使用はHIVや他の性感染症の感染リスクや妊娠の可能性を大きく高めます。潤滑剤(ローション)との併用や薄型など選択肢もあります。また、コンドームを使用したセックスの方が、安心感が高まり身体もリラックスでき、気持ちよさが高まったりします。「コンドームは気持ちよくないから使わなくてもいい」は相手の存在を無視した独りよがりな考えです。

・HIVはもう治る病気だから怖くない

→HIV感染症は治療でコントロール可能になりましたが、完治は難しく、生涯にわたる服薬が必要です。

・若い人は性感染症に感染しない

→年齢は関係ありません。若年層でも感染は増えています。

・一度検査で陰性ならずっと大丈夫

→ウィンドウ期間(感染しても検査で出ない時期)があるため、定期的な検査が必要です。

・潤滑剤はなくても問題ない

→潤滑不足は粘膜の損傷を招き、感染リスクを高めます。特に肛門性交では重要です。

・アルコールやドラッグを使うとリラックスできて安全

→判断力の低下により、コンドーム未使用や複数パートナーなど高リスク行動につながりやすくなります。

・HIV陽性の人とは絶対に安全にセックスできない/逆に全くリスクがない

→極端な誤解です。治療によりウイルス量が検出限界未満の状態(U=U)であれば性行為で感染しないとされています。また、コンドームやPrEPの使用も有効です。一方で、対策がなければ感染リスクは存在します。つまり、HIVに感染している人もしていない人も、セーファーセックスを楽しむことができます。

間違った説を鵜呑みにしたままセックスをしていると、無症状で気づきにくい性感染症、避妊の誤解による望まない妊娠、同意の曖昧さから生じる心理的負担、準備不足による痛みや怪我などにつながる可能性があります。裏を返せば、 正しい知識・定期検査・予防手段(コンドーム、ワクチン、PrEPなど)によって、リスクは大きく下げられます。行動(コンドーム未使用・検査未実施など)によってリスクが変わるというのが科学的な理解です。

※PrEPとはHIVに感染していない人が抗HIV薬を予防として服用し、セックスでのHIV感染を防ぐ方法です。Pre-exposure Prophylaxis(曝露前予防内服)の略称

セックスの誤解はどうして生まれる?

このようなセックスに関する誤解は、ひとつの原因から生まれるものではありません。さまざまな情報や環境が重なり合い、気づかないうちに「なんとなくのイメージ」が形づくられていきます。

たとえば、私たちが日常的に触れている情報。ポルノ(AV)やSNS、友人同士の会話、ドラマや映画など、セックスに関する情報は身近にあふれています。ただ、それらは多くの場合、現実の一部を切り取ったものであったり、演出や誇張が含まれていることもあります。それでも印象の強さゆえに、そのイメージだけが記憶に残る情報として蓄積されていきます。

一方で、そうしたイメージを修正したり、補ったりするための正確な知識に触れる機会は決して多いとはいえません。特に日本では、学校で学ぶ内容には限りがあり、家庭でも話題にしにくいテーマであることが多いです。分からないことがあっても、そのままにしてしまうことが少なくありません。こうして、断片的な情報と知識不足が重なることで、「これが普通なんだ」「みんなこうしているはず」という感覚が生まれていきます。本来は一例に過ぎないものが、いつのまにか“基準”のように感じられてしまうのです。

その思い込みは、やがて行動にも影響を与えます。避妊を軽く考えてしまったり、同意の確認を曖昧にしたまま進んでしまったり、自分や相手に無理をさせてしまうこともあるかもしれません。そしてその結果が、望まない妊娠や感染症、心理的な負担、関係性のトラブルといった形であとから現れることもあります。

このように見ていくと、誤解は個人の知識不足だけでなく、偏った情報の環境や話しにくさといった、さまざまな要因が重なって生まれていることが見えてきます。

セックスの誤解はどんなリスクを引き起こす?

誤解があるままのセックスは、さまざまなリスクにつながります。

・望まない妊娠

避妊に関する誤解や不十分な対策によって起こる可能性があります。低用量ピルや子宮内避妊具など他の避妊法を使用していない場合、コンドームをつけない挿入行為やコンドームが途中で外れたり、破れたりすることはもちろん、精液が直接腟内に入らなくても、妊娠の可能性はゼロではありません。
例えばお尻についた精液、素股(男性器を女性の股に挟み、圧迫や摩擦で快感を得る行為)、手にカウパー腺液や精液がついている状況でコンドームを装着し、コンドーム表面についた状態での性行為でも妊娠する可能性はわずかながらあります。


・性感染症(STI)

無症状のことも多く、「自分は大丈夫」と思っていても気づかないまま感染しているケースもあります。例えば若者に最も多い性病のクラミジアは感染しても症状が出ないことが多い性感染症です。海外の公的機関では、性器クラミジア感染について少なくとも女性の70%、男性の50%が診断時に無症状とされています。症状がなくても感染していることがあるため、不安があるときは検査を受けることが大切です。


・心理的な負担

同意が曖昧なまま関係が進んでしまうと、あとから違和感や後悔につながったり、結果的に相手を傷つけてしまうこともあります。自分がしたいと思っていても、相手も同じ気持ちとは限りません。 目が合って笑い合ったり、二人きりでお酒を飲んだり、家に行ったり、キスをしたり……。そうした出来事が、その先の性行為への同意を意味するわけではありません。

また、交際や結婚をしていても、いつでも相手の求めに応じなければならないわけではありません。性行為に応じることの多さが、愛情の深さを示すものでもありません。同意は、その都度、お互いの意思として確認されるものです。 その場の雰囲気や関係性ではなく、「したいかどうか」を言葉や態度で確かめ合うことが、安心につながります。


・性暴力

性暴力とは、性に関わる場面で起こる人権侵害のことを指します。誰かの意思に反して性的な行為が行われることで、その人の心や身体の安全、そして「自分で選ぶ権利」が損なわれてしまう状態です。具体的には、同意のない性行為だけでなく、性感染症予防や必要な避妊に協力しない性行為、デートDVや痴漢、セクハラなども含まれます。大切なのは、行為の内容だけで判断するのではなく、 自分が「イヤだな」「不快だな」と感じるかどうかという感覚です。望まない性的な関わりは、それだけで性暴力にあたります。

それにもかかわらず現実には、「そのときの服装が問題だったのでは」「軽いことだから気にしすぎ」「早く忘れたほうがいい」といった言葉によって、被害を受けた側が責められたり、経験が軽く扱われてしまうことも少なくありません(これを「二次被害」「セカンドレイプ」などと呼びます)。しかし、性暴力の責任はあくまで加害者にあります。 被害を受けた側が責任を感じる必要はありません。


どれも特別なケースではなく、「なんとなく大丈夫」という状態から起こりやすいものです。では、どうすれば安心してセックスと向き合えるのでしょうか。

大切なのは、シンプルですがこの3つです。

1.正確な知識を持つこと
避妊や感染症、身体の反応について、正しく理解すること。

2. 避妊と感染対策を両立すること
「妊娠しないため」と「感染しないため」は別の問題。両方をそれぞれで考えることが重要です。

3. 率直にコミュニケーションをとること
同意は“空気”ではなく、言葉で確認するものです。その場のムードに流されず、不安なこと、嫌なこと、心地よいことを言葉にするように心がけましょう。相手の答えがなかったり曖昧な場合は、一度ストップして、明確な「したい」という気持ちが確認できるまでは無理に進めないことがより安心につながります。

セックスにおいて、感じ方やペース、心地よさも人それぞれ違います。だからこそ、誰かの「普通」や「イメージ」に合わせる必要はありません。そしてもうひとつ大切なのは、安心できる状態は、知識と関係性の両方でつくられるということ。

ひとりでも、相手がいても、性的な行為やセックスは本来、より親密なコミュニケーションや幸せ、人生の豊かさにつながるものです。性的な行為があなたらしい幸せ・ウェルビーイングにつながるためには、迷信や思い込み、「なんとなく知っている」から一歩進んで、正確な知識を持つことが欠かせません。その知識をもって、自分や相手のことをもっと深く知り、向き合うことは、自分ひとりでも、相手といても、より豊かな時間を過ごす一歩となることでしょう。