ジェンダーに基づく暴力

女らしさ、男らしさの押し付けは
立派な性暴力。

violence gender based violence 0
社会的な習慣や歴史、文化などによって作り上げられた男性像、女性像のような男女の区別を示す概念を、ジェンダーといいます。ジェンダーというもの自体は、良い悪いの価値を含むものではありません。でも、男女の枠にはめて格差をつけ、それぞれの個性や違いを許さないことは、女性にとっても男性にとってもそれに当てはまらない人にとっても大変な問題です。

「男ならこうあるべき、女ならこうあるべき」という表現を見聞きしたことがあるのではないでしょうか。男性は、強くてたくましい、積極的、判断力がある、理性的。女性は優しくてかわいい、よく気がつく、人を立てるのがうまい、感情的。

そういったものを内面化すると、DVなどの暴力、性的搾取(特に女性)、長時間労働の強要(男性)、意思決定プロセスからの排除(女性)、自殺への追い込み(男性やLGBTQなど)に結びつきます。これがジェンダーに基づく暴力の構造です。

しかし、平均的に見れば男女に身体的な能力の違いはあっても、実際は性別問わずに個人差の方が大きく、また、知性や情緒、感性などの能力や特性も性別には関係ありません。先ほど挙げた特性や傾向があるとする認識は、「男らしさ」「女らしさ」の固定観念に基づいて割り当てられてきた役割や、芸術表現における男女のイメージなどによるものです。にもかかわらず、ステレオタイプのジェンダーが原因となり、言葉や身体的な暴力で傷を受けるケースは後を絶ちません。

また、LGBTQ当事者も、ジェンダーに基づく暴力の被害者になりやすいです。性的少数者の子どもは自分自身を肯定的に捉えることが難しい場合が多くあり、自己肯定感は低くなりやすい状況にあります。「REACHOnline2016forSexualMinority」(宝塚大学看護学部日高研究室)が2016年に公表した「LGBTの学校生活調査」の調査結果によると、LGBT当事者の約6割にいじめ被害経験がある ことがわかりました。言葉による暴力の被害率は63.8%、服を脱がされるいじめ被害率は18.3%でした。「男らしくない」「女らしくない」とみなされることが、いじめ被害に結びついている可能性が高いと示唆されています。


このような現状を生み出している一因に、マスメディアや日常生活のやり取りの中で、「ホモ」「オカマ」「レズ」「男おんな」のような言葉に触れる機会が多く、子どもの頃から刷り込まれていることが挙げられます。また、こういった暴力は、被害者のセクシュアリティには関係なく、「らしさ」から外れることによって誰もがターゲットになります。

今は、性の多様性を認めることが人権尊重のひとつとして理解されるようになっています。「男らしさ」「女らしさ」を人に強要したり、そこに沿わない人に暴力を行うことは許されることではありません。 ジェンダーに基づく暴力に人権課題として目を向けること。性を中核においた、人権が大事にされる社会になることが求められています。
violence gender based violence 1