不同意性交罪

同意のない性的行為は犯罪。
性犯罪に関する刑法の改正で
押さえておきたいポイントとは?

violence crime of disagreeing to sexual intercourse 0
2023年6月16日、性犯罪に関する刑法の改正案が国会で可決・成立しました。7月3日から施行された改正刑法では、これまでの「強制性交罪」から「不同意性交罪」と名前が変わり、“同意のない性的行為は犯罪”と明確化されました。この記事では法改正のポイントをまとめていきます。

大きく変更されたのは「不同意」という点。
処罰に必要な要件も具体的に示された

これまでの「強制性交罪」を成立させるには、同意がないことに加えて暴力や脅迫、心神喪失など、被害者が著しく抵抗することが困難な状態だったと証明することが必要でした。この“抵抗が著しく困難な状態”について、これまでは明確な判断基準がなく裁判官によって判断にバラつきがあり、性犯罪の実態に合っていないことが多く指摘されていました。

今回の法改正により、「強制性交罪」と「準強制性交罪」を統合して罪名を「不同意性交罪」とし、 同意がない性行為は処罰される ことを明確にしました。さらに暴行や脅迫だけでなく、「恐怖・驚がく」や「アルコール・薬物の摂取」など、「不同意性交罪」に該当する8つの要件が具体的に示されました。

〈「不同意性交罪」の成立を構成する8つの要件〉
次の1〜8のいずれかを原因として、被害者が同意しない意志を形成、表明または全うすること(嫌だと思うこと、それを言うこと、言い続けること)が困難な状態にさせ、あるいは相手がそのような状態にあることに乗じて性的行為に及ぶと「不同意性交罪」が成立します。

1. 「暴行・脅迫すること」
2. 「心身の障害を生じさせること」
3. 「アルコールや薬物を摂取させること」
4. 「眠っているなど意識が不明瞭な状態であること」
5. 被害者が不意に襲われるなど、「拒絶するいとまを与えないこと」
6. 被害者がショックでフリーズ状態になるなど「恐怖・驚愕させること」
7. 無力感や恐怖心といった「虐待による心理的反応があること」
8. 親と子、教師と生徒、上司と部下など、「経済的・社会的地位の影響力による不利益を憂慮していること」

出典:法務省ウェブサイトをもとにSEXOLOGY製作委員会作成


時効の延長や性交同意年齢の引き上げも

さらに今回の法改正により、 性犯罪についての時効期間がそれぞれ5年延長 になりました。これは性被害の特徴として、被害にあってからすぐに訴え出るのが難しいことがあるからです。具体的には「不同意性交罪」の時効は今の10年から15年に、「強制わいせつ罪」から変更された「不同意わいせつ罪」は7年から12年に延長されました。

なお、被害者が18歳未満の場合は、被害者が18歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間が、時効期間となります(例えば12歳の不同意性交等の被害の場合、時効完成は15年+6年=21年後となる)。

また、たとえ相手の性交への同意があったとしても関係なく、有期懲役という重罪を成立させる年齢、性交同意年齢が「13歳以上」から「16歳以上」に引き上げられました。同意の有無に関わらず16歳未満との性行為は処罰されますが、同年代の恋愛までもが処罰されかねないことも考慮し、 被害者が13歳〜15歳の場合の処罰の対象は5歳以上年上の相手 としています。

最近の性犯罪の傾向を踏まえ
新たな罪も新設された

近年SNSの広がりやスマートフォンの普及などに伴って性被害に遭う子どもが増えていることから、新たな罪も新設されました。その一つが「 撮影罪 」の新設です。いわゆる盗撮を防ぐために、わいせつな画像を撮影したり、第三者に提供する行為などを取り締まるために設けられました。

また、いわゆる「 性的グルーミング罪 」も新設されました。これは16歳未満の子どもに対し、わいせつ目的でだましたり誘惑する、お金を渡す約束などをして会うことを要求したり実際に会う、わいせつな画像を撮らせ、SNSやメールで送るように求めることを取り締まるための罪です。
もともとは(動物の)毛づくろいという意味であるグルーミング。性犯罪、性的虐待の文脈では性的虐待を目的として未成年の子どもと親しくなり、信頼を得る行為を指します。「信頼している人が自分に悪いことをするはずはない」と思う子どもの心や罪悪感、羞恥心を利用して大人が関係性をコントロールするのです。グルーミングは巧妙で、相談に乗りながら信頼させ、騙されていることすらも感じさせないほどにコントロールするため、被害に遭った子ども側がなかなか「自分は被害者だ」という実感を持てない難しさがあります。子ども時代のグルーミング経験が大人になってからトラウマになるケースも少なくありません。

性暴力をめぐる裁判の無罪判決が相次いだことも
法改正の後押しに

2019年3月に性暴力をめぐる裁判で4件の無罪判決が相次いだことから、法律の見直しを求める声が高まりました。性暴力の被害者や支援者が声を上げる「フラワーデモ」という抗議活動も全国に広がり、法改正の後押しとなりました。

今回の法改正により処罰される対象が広がり、冤罪の懸念を指摘する声もありますが、今回の法改正はこれまでそれぞれの裁判官が抽象的な条文を基準に判断していたことが明文化された形です。改正刑法により本来処罰されるべき案件がきちんと捜査されるようになるため、有罪となるケースは増えるのではないかと言われています。

今回の大幅な改正により性暴力の抑止や被害者救済に繋がることが期待されていますが、「同意がなければ犯罪になりうる(No Means No)」から、次の改正では「性行為には同意が必要(Yes Means Yes)」へ進むべき、という意見もあります。法改正だけですべての性暴力が処罰され、被害者が救済されるわけではありません。同意に関することを含めて、年齢にあわせた包括的性教育の実現や、そういった教育を受けてこなかった私たち一人ひとりの意識をアップデートしていくことが必要ではないでしょうか。

よくある悩み

性的同意を取ることに恥ずかしさがあるのですが……。

性行為の意志を相手に確認するのは恥ずかしさから、つい曖昧にしてしまいがちかもしれませんが、性行為の前に、性について率直に話をできる、かつ、できる限り対等な関係を作っておくことが大切です。性行為の直前だと断り切れない雰囲気に流されてしまうこともあるため、普段から性行為に限らず、さまざまなことについて互いに同意を確認する関係を作っておきましょう。
性的同意についてはこちらの記事も合わせて参考にしてみてください。