特権

あなたにとっての当たり前、
もしかしたら特権なのかも?

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「特権」とは何でしょうか?マジョリティ側(多数派、発言力が強い側)にいる人々にはなんらかの「特権」がありますが、多くの場合、その「特権」に気づかないままで過ごしています。特権とは、その属性によって労をなくして得ている利点や利益のことを指します。この記事では、特権とは何か、そしてそれを理解し自覚することの重要性について考えてみましょう。

特権とは何か?

特権は、しばしば「見えない力」として機能します。特権を持つ人々は、自分たちが特権を持っていることに気づかないことが多いのです。例えば進学や職業選択は多くの人が自分の努力の結果である、平等な中での自己選択だと思っています。しかし実際は経済力など生まれ育った家庭環境が大きく影響しています。また女性には「浪人までしなくてもいいんじゃない?」「大学院まで行かなくても」「地元に残った方が」という声がかけられますが、男性は性別を理由に進学に制限をかけられることはほとんどなく「自分で選んだ」と思っています。

また、自分では「普通」だと思っていることが実は特権である場合も多くあります。日本では例えば、日本国籍で、薄橙の肌色で、黒髪、黒い瞳、障がいがなく、右利きで、仕事(収入)があって、シスジェンダーで、異性愛で、男性で、父母がいて、パートナーがいて、子どもがいる……などの属性を持つ人。これらの属性を持つ人はそれを「普通」だと思っていて特権を持っているとは思っていないことが多いのではないでしょうか。そのため外国人や女性、障がい者、LGBTQ+などの人々が権利保障を訴えると、「自分の権利が奪われるのでは?」と不安になったり、怒りが湧いて反発したりするかもしれません。ときにはさらにエスカレートして憎悪犯罪につながることさえあります。

こういった、自分で選んだと思い込んでいることや、自分では普通だと思っていることにも無意識の特権が潜んでいることがあるのです。

男性特権と有害な男らしさ

マジョリティ側に属するとき、そこにはなんらかの特権があります。男性であること、異性愛者であること、裕福であること、白人であること、大学生であること、障がい者でないことなど、様々です。例えば、異性愛者の人々は、自分の性的指向が社会で受け入れられることが前提とされています。経済的特権を持つ人々は、より良い教育や医療を受けることができ、生活の選択肢も広がります。白人の人は、日常的に人種差別を受けることが少ない傾向があります。

男性であることも1つの特権です。例えば、リーダーシップをとる機会が多かったり、進学に反対されることがなかったり、職場での昇進の機会が多かったり、家事時間が少なくても問題にはされなかったり、夜道を痴漢などの心配なく歩けるなど日常生活で安全を感じやすかったりすることなどが含まれます。もちろん、すべての男性にこのような特権があるわけではありません。

男性特権と相互に関係しているジェンダーについての概念に、「トクシック・マスキュリニティ(自他に有害な男性性のこだわり)」があります。トクシック・マスキュリニティとは、伝統的な男性性に関連する一連の行動や態度の中で、特に有害とされる側面を指します。「男なんだから泣くな」「一家の大黒柱であれ」といった従来のステレオタイプの男らしさは、男性自身のメンタルヘルスに悪影響を与えています。弱みを見せられず、過度なプレッシャーを感じて精神的に追い詰められ、鬱や自殺に繋がることも。それだけでなく、「男は仕事、女は家庭」といった差別的な考えにも繋がり、あらゆる人にとって生きづらい社会を構築しながら、ジェンダー平等の実現を妨げ続けています。

特権を自覚することの重要性

男性に限らず誰でも、マジョリティ側になると特権に無自覚になりがちです。言い換えれば、無自覚だからこそ、特権であるともいえます。正規雇用で働くこと、大学に通うこと、ごはんをお腹いっぱい食べられることは「普通」とか「当たり前」だと認識しがちですが、決してそうではありません。

ではなぜ特権を自覚することが大切なのでしょうか?それは無自覚であることが、無意識のうちに他者の生きづらさや時に差別にも繋がっているからです。例えば特権に気づかないままでいれば、それ以外のマイノリティの人々が経験するあらゆる困難は本人の努力不足等とされ、根本的解決がされないまま見過ごされ続ける可能性があります。また、マイノリティの人々が権利保障を主張すると、「わがまま」だとか「特権を欲しがっている」と認識されてしまうことがあります。特権に気づくことで、この社会の差別のしくみを理解し、それを乗り越える道が拓けます。

一方で、特権があるからと言って、必ずしも自分を責める必要もありません。そもそも特権のない人は、誰もいないのですから。しかしその中でも、自分自身が持っている特権、パワーを認識し、あなたの持つ力を周りの人のために使えば、それはポジティブな結果を生むはずです。

特権を自覚することは時に痛みも伴いますが、より広い視野に立って物事を考える機会をも与えてくれます。特権について考えることは、私たちがより共感的で公正な社会をつくっていくために必要なことです。