2022年7月 に発表された2022年版ジェンダー・ギャップ指数の日本の総合スコアは0.650、順位は146カ国中116位(前回は156カ国中120位)。先進国の中では最低レベル、アジア諸国の中でも韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となっています。日本はこれまでも、下から数えて2〜3割の順位が定位置となっており、世界的に見ると男女平等の実現で出遅れているのです。
ここではジェンダーギャップ指数の解説と特に日本が遅れを取っている分野について、そして2022年の7月から大企業などに義務付けられた男女賃金格差情報開示について紹介していきます。
ジェンダーギャップ指数とは?
ジェンダーギャップとは、男女の違いから生じている社会や家庭などでの格差を示します。各国におけるジェンダーギャップの度合いを比べる指標として、世界経済フォーラム(WEF:スイスに本部を置く国際機関)が2006年以降、毎年数値を公表しているのが「ジェンダーギャップ指数」です。
ジェンダーギャップ指数の算出方法
ジェンダーギャップ指数は基本的には「女性÷男性」で計算され、男女の格差がなくなれば指数は「1.000」に、格差が大きければ「0.000」に近づきます。つまりジェンダーギャップ指数が「1」に近い国ほど、男女の完全平等に近づいているということになります。
男女の格差を測定するために、「政治・経済・教育・健康」の4分野の統計データから算出されます。これら4分野のスコアをそれぞれ導き出した上で、その平均値が最終的なジェンダーギャップ指数として公表されています。各分野の具体的な小項目は以下の通りです。
〈政治参画〉
- 国会議員の男女比
- 閣僚の男女比
- 最近50年における行政府の長の在任年数の男女比
〈経済参画〉
- 労働参加率の男女比
- 同一労働における賃金の男女格差
- 推定勤労所得の男女比
- 管理的職業従事者の男女比
- 専門・技術者の男女比
〈教育〉
- 識字率の男女比
- 初等教育就学率の男女比
- 中等教育就学率の男女比
- 高等教育就学率の男女比
※国によっては高等教育就学率の指標がない場合もあります。日本は2022年のデータから高等教育就学率の指標が含まれなくなり、それによって〈教育〉分野の順位が上がったとの指摘も。
〈健康〉
- 出生児性比
- 健康寿命の男女比
特に遅れが目立つのは
「政治」と「経済」
日本は識字率や初等・中等教育の就学といった「教育」分野ではギャップ指数1.000、つまり男女平等であり順位も1位ですが、他の分野のスコアがとても低く、146カ国中116位という先進国の中で最低レベルの結果になっています。具体的には「健康」が63位、「政治」が139位 、「経済」が121位 と、特に「政治」と「経済」の分野で遅れが目立ちます。これは「機会の平等」が「結果の平等」に結びついていない現れです。国会議員や管理職の女性比率の低さが特に顕著で、意思決定の場に女性が少ないと格差を生む社会構造が温存されやすいといいます。
具体的な数字で見ていきます。まず、国会議員に占める女性割合は衆参両院合わせて15.4%(令和4年9月1日時点)です。また女性は非正規雇用労働者が女性労働者全体の53.6%を占め、これは男性の非正規雇用労働者の割合(21.8%)と比べて2倍以上の数となっています(「男女共同参画白書」令和4年版データ)。男女の賃金格差も大きく、男性賃金の中央値を100とした場合、女性は77.9と男女差は22.1ポイント開いています(「経済協力開発機構」令和3年データ)。
女性の非正規雇用が多く管理職が少ないことから、平均所得の男女差に開きがあることに加え、コロナ禍で男性以上に女性が失職したことも見落とせないポイントです。相対的な順位も日本の「遅れ」を確認するには重要ですが、ギャップ指数を見て、それぞれのどの小項目に課題があるのかを押さえることも同じくらい重要です。
2022年7月、男女賃金格差の公表が
新たに義務付けられた
2022年6月に政府決定した「女性版骨太の方針2022」では「女性の経済的自立」や「女性の登用目標達成」など、政府全体として現状のジェンダーギャップに対する今後の重点的に取り組むべき事項を定めています。そしてこの方針に基づき、2022年7月に女性活躍推進法の厚生労働省令が改正され、労働者301人以上の企業に対して、男女の賃金差異の公表が新たに義務付けられました。
ジェンダーギャップ指数が1位のアイスランドでは2018年、企業が男女の同一労働同一賃金 を証明するよう世界で初めて義務付け、期限までに証明できない企業には罰金を科すといいます。日本でも今回の男女賃金格差の公表義務付けによって、実際に賃金の男女差がどこまで縮小されるかが注目されています。
また欧米では、性別によって職務の適性が異なると考えられていることなどから起こる「性別職業(職域)分離」が男女賃金格差の要因として指摘されており、これを是正するために生まれたのが、同一労働同一賃金からもう一歩進んだ、「同一価値労働同一賃金」の考え方・取り組みです。
同一価値労働同一賃金とは、男女が同じもしくは類似の仕事をしている場合だけでなく、異なる仕事をする場合も、職務全体として同一の価値がある場合は同一の報酬を受けるべきという考え方です。日本でも同一価値労働同一賃金の実現が重要です。