アウティング

アウティングについてすべての人が知っておくべきこと。

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※この記事には自死に関する内容が含まれます。

アウティングとは、本人が公にしていない性的指向・性自認について、本人の承諾なしに第三者に話したりSNSに書き込むことです。たとえ悪意がなかったとしても、他者によるアウティングによって学校や職場でいじめやハラスメント被害に遭ったり、左遷・退職勧奨を受けたり、友人や家族との関係性が壊れてしまうなど、被害者が精神的ダメージを受けたり居場所を失うことが少なくありません。

アウティングは命を絶つ人もいるほどの暴力的な行為であり、プライバシーの侵害です。性的指向・性自認に関わる情報は大切な個人情報。万が一うっかり言ってしまった場合はまずは本人に謝罪し、誰に伝えてしまったのかを伝えます。まず本人に確認することが何よりも優先すべきことです。

「自分に話してくれたからといって、勝手に周りに伝えていいわけではない」ことは、性的指向や性自認に限らず、他人に秘密をバラしたり住所などの個人情報を無断で第三者に言いふらす行為がダメなのと同じことです。
「よかれと思って」という行動も、被害者に大きなダメージを与えかねません。万が一他者の性的指向・性自認を第三者に伝える必要がある場合は、勝手に判断せず、必ず本人に確認するようにしましょう。

カミングアウトされた場合、アウティングされた場合、それぞれどうすればいい?

改めてカミングアウトとアウティング、それぞれの意味を整理しておきましょう。

カミングアウト:

LGBTQ +当事者が、自分の性的指向・性自認を自ら他者に伝えること。


アウティング:

本人の許可を得ずに、第三者にその人の性的指向や性自認を勝手に暴露すること。

カミングアウトをされたけれど、自分一人で受け止めきれないときがあるかもしれません。まず、これまで誰に言ってあるのか(誰が知っているのか)、これから誰に言ってもいいのかをお互いに確認し合いましょう。自分一人ではどうしていいかわからず、誰かに相談したいと思ったときは、都道府県などが設置している匿名で秘密保持義務のある相談窓口やカウンセラーなどを利用する方法もあります。
アウティングされた場合も一人で抱えず、信頼できる人に相談しましょう。必ず味方はいます。時と場合によりますが、養護教諭、スクールカウンセラー、産業カウンセラー、各地の弁護士会(無料相談もあります)などに相談してみましょう。自治体の相談窓口も、近年LGBTに関する相談を受け付けると表示している窓口が増えてきています。また、プライベートなピアグループ(自分と似た悩みや境遇の仲間が集まる場所)を含む、複数の「居場所」を作っておくことも精神的安定には大切です。にじーず(※)のような団体もあります。

※10代から23歳までのLGBT(かもしれない人を含む)が集まれるオープンデーを定期開催している一般社団法人
https://24zzz-lgbt.com/

アウティングという言葉が広まるきっかけになった
一橋大学大学院での事件

2015年、一橋大学の法科大学院に在籍する学生Aさんが授業中に教室のある建物から転落し、亡くなった事件が起きました。Aさんは亡くなる2ヶ月前、クラスメイト同士のSNSでとある同級生から同性愛者であることを暴露され、その影響で心療内科に通うほど心身に不調を抱えるように。大学のハラスメント相談室に相談したものの、大学側から適切なサポートを受けることができず、自ら命を絶つことになってしまったという事件です。

Aさんのご両親はアウティングをした同級生と大学の責任を追求して損害賠償を求める民事訴訟を起こしましたが、東京地方裁判所の第一審判決も東京高等裁判所の控訴審判決も、一橋大学の責任を否定しAさんのご両親の請求を退け、Aさんのご両親が上告しなかったので控訴審判決が確定しています(第一審の証人尋問前に加害者の同級生との間では和解が成立していたため、判決における争点は一橋大学の責任の有無に絞られていました)。

この事件をきっかけにアウティングという言葉が世間に広まることとなり、また事件を受けて、一橋大学の所在地である東京都国立市では2018年に「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が成立することに。条例によってアウティングが禁止されました。

パワハラ防止法について

2019年5月、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が成立し、大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月から施行されています。パワハラ防止法では、性的指向・性自認に対するハラスメントやアウティングもパワーハラスメントであると明確に謳われています。企業にはそれらを防止する義務が法律で定められたという内容になっています。

アウティングはすべての人に関わることです。無意識のうちに誰かを傷つけてしまわないように正しく意味を知った上で、性的指向や性自認に関わる情報は個人情報であるという認識を社会に広めていきましょう。