“性の商品化”という言葉を知っていますか?これは、人間の性が人格から切り離され、モノとなって流通すること を意味します。そして、大きく2つのパターンに分けられます。
一つは、からだや性行為・モノが直接商品として売買される場合で、典型的なものに売買春があります。もう一つは、性的な表現が商品化される場合で、ポルノグラフィー、アダルトビデオ(動画) が代表的な例です。また、性にかかわる女性(男性)の身体や、その一部を強調して扱うミス(ミスター)コンテスト、注目を集めるために利用するCM、ポスター、イベントなどさまざまな形態も、性の商品化 といえます。
そうした性の商品化の背景にあるのが、ジェンダー格差 です。男性の社会的・経済的優位性や、男性による女性の所有(モノ化)が、性の商品化を生み出します。女性からみると、低賃金であったり、適切な収入の手段がないために貧困に陥ったり、追い込まれた結果、“自分の体を売るしかない”と、自らの性を商品として提供しなければいけないと思って性産業に参入せざるを得なかったという構造があります。また、そこで得られる収入や賞賛が自分の存在に対する承認だと勘違いしてしまうこともあります。
たとえば、女子高生の接客を売りものにする「JKビジネス」は、「女子高生」というカテゴリーと性的身体のみに価値をつけて女子高生を売り物にします。それが経済的利益だけではなく、一瞬でも自分の必要性を感じる(承認される)と、未成年の女性の居場所となってしまっています。 しかし買う側はそこにいる未成年女性を「商品」(モノ)としか見ていません。したがってそこでは同意や避妊、性感染症予防といった性的人権はないがしろにされてしまいます。これは未成年の女性の経済的にも人間関係的にもまだ十分ではないという立場を利用した(未成年女性にとっては利用された)商売です。高校を卒業した後は風俗に斡旋されるなどの仕組みもあります。 もちろん異性を求める男性のものよりも少数ですが、女性のために男性の性を商品化したり、同性のために性を商品化したりするケースもあります。これらにも貧困や承認の少なさとの結びつきがあるものが見られます。
アダルトビデオや、女性の身体や一部を強調した表現も、私たちの身近にあります。アニメなどで描かれる、極端に大きな胸をした女性キャラクターも、“女性を性的に消費しているのではないか”と問題になっています。
特に、公的な場所に掲示されるポスターに、不自然に思える巨乳と頬を赤らめた表情の女性キャラクターが使われた出来事は、何度も問題視されています。
また、インターネットが普及し、アダルトビデオ(動画)が手軽に見られるようになったことで、他の問題も生まれています。アダルトビデオのほとんどは、男性の性欲を起こさせる目的のみで作られたものです。登場する人物は演技をしているし、映像は製作者の意図により演出されています。そこで描かれるセックスそのもの、シチュエーション、すべては幻想でしかありません。にもかかわらず、セックスについてきちんと教えてもらう機会がないためにアダルトビデオ(動画)を教科書のように考え、“これを女性が望むこと”だと誤った思い込みをしてしまうことが多々あります。 たとえば、激しい愛撫や不自然な体位など、視覚重視であるアダルトビデオ(動画)ならではの演出を、現実では苦痛に感じている人が多くいます。
また、多くのアダルトビデオ(動画)では、コンドームをつけるシーンを極力映さないようにしていることが多いため、現実でもコンドームをつけなくてもよいという思い込みを作ってしまいます。そして、アダルトビデオ(動画)では、「痴漢」「レイプ」「盗撮」などの犯罪も、性行為のバリエーションのように扱われています。 それを見て、「痴漢をされたがっている女性もいる」「抵抗していても最後は気持ちよくなる」などと思い込んだり、映像に触発されて、性暴力につながるケースも生まれています。警察庁の 科学警察研究所が性犯罪者553人に実施した調査では、犯行のきっかけについて、「AVと同じことをしてみたかった」という人が33.5%を占め、少年に限ると49.2%に跳ね上がります。
もちろん、見た人全てが性犯罪を行うわけではないですが、日本では性教育が十分に行われていないことにより、知識の乏しい若い世代への影響が懸念されています。